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パロディ
バッハは一度作った曲を再利用して別の曲を作っていた。
それはパロディと呼ばれている。
多い時は本BWV36「喜び高く舞いあがれ」のように1曲から計3曲も作った。
この4曲は「パロディ」と記されている。
wikipediaによると「パロディ」は、他者の作品を模倣,作り替え、盗作,盗用、許可なき引用など、 著作権侵害という悪い意味で使われることが多い。
バッハは自分の曲を盗作などしないけど,と思った。
そこで、パロディと扱われているBWV 36の4曲の一群を検証しようと思った。
BWV 36の原曲は失われて!ない。
が、a.b.c.で区別されている再利用した3曲を下記のように表にすると
次のようにほぼ原曲が見えてくる。
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[ 36 喜び 高く舞いあがれ 全8曲 ] 不明
36a 喜び空に舞いあがれ 全9曲 結婚祝
36b 喜びがわきあがり 全8曲 就任祝
36c 喜び高く舞いあがれ 全9曲 誕生祝
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問題はBWV 36の原曲が「ない」と言うこと。 晩年のバツハは眼の病気で二度手術をしたが、かえって死をはやめ、亡くなると、仕事場を次期カントールに明け渡さなければならず、楽譜,書籍一切が運び去られた。 ある人が肉屋の包み紙に使われていた楽譜を発見し、まとめて買い取った。(小説バッハ、フランク,佐藤牧夫訳,1971、音楽の友社)。
と言うように,散逸した楽譜は長年かかって集められたが、多くが失われた。
1723年にトマス教会カントルに就任したバッハは、最初に、3年間1サイクルとする教会暦により、彼のカンタータ形式(6~8曲、15~20分の持ち時間を説教の前と後に分ける形式)を確立し、3年分を作り,その後の基礎にした。
バッハは年間60曲のカンタータを作曲し,演奏した。すると、在職27年x60曲=1200曲となる。が、現存する220曲はあまりにも少なすぎる。
BWV 36 喜び高く舞い上がれは不明であるが、彼が再利用した曲をよく見比べると原曲の大半はわかる。
パロディとして作られたBWV a.b.c.三曲の共通項を3点ほど上げよう。
1.歌詞を抜いた各曲の楽譜は、ほぼ同一である。
2.構成:アリア 第3曲アリア、第5曲アリア、第7曲アリア
3. 朗唱:第2,4,6。朗唱は、結婚,就任、記念など目的が異なるので、いくつかのパターンで歌われる。
このように元曲を再利用して作られたことが認められる。
次に、失われたBWV 36を再建してみよう。
原曲
0.BWV36 喜び高く舞い上がれ (Schwingt freudig euch empor) |
本曲BWV36は、原曲の所在は不明となっている。
構成 ————————-
共通の楽器: オーボエまたは,フルート、 1,2バイオリン ビオラ 通奏低音(ビオロンチェロまたはオルガン)
ボーカル:ソプラノ、アルト,テノール,バス
譜面: 共通楽譜 ————-
1、BWVa,b,c,の三曲は歌詞抜きの楽譜はほぼ同じ。
2.曲の構成 第1曲合唱、第2曲朗唱、第3曲アリア、第4曲朗唱、第5曲アリアと合唱、第6曲朗唱、第7曲合唱・コラール、第8曲合唱。は第9曲がある。
第1曲と第8曲は103小節の大きな大きな合唱である。
ここでにBWVa,b,c,の骨格がある。
2、第2曲、4、6曲の朗唱は、10小節、約1分の短いソロで、聖書のことば、誕生、結婚、就任などの内容をうたう。ギリシァ古典演劇に見られる口上や進行なとの伝統の形を継承している。
3、第3曲アリアは200小節、5~6分、「愛は優しく歩み寄り」など、
短い歌詞をフーガで繰り返し,それをさらにダ・カーポで繰り返し2倍にする。他に、第3曲、5曲、7曲、9曲。高音やメリスマなどソリストの技量が求められる。
4、第4曲朗唱、原曲BWV 36のように通常礼拝のカンタータは朗唱は教会暦に定められた聖句の中から歌詞を作る。1分未満、10数節。
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(以下、BWW36a,b,c,そして原曲の順)
1.BWV36a 喜び高く空を舞う (Steigt freudig in die Luft) |
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1726年11月30日
アンハルト・ケーテン候レオポルトの2番目の妻、候女シャーロット・フリーデリケ・アマリアの24歳の誕生祝。歌詞は、ピカンダーの1727年刊の著書「Ernst-Schertzhaffte und Satysche Gedichte,Teil1」の中の「Steigt freudig in die Luft.」
アンハルト・ケーテン 侯爵、侯女 |
2.BWV36b 喜びが湧き上がり (Die Freude reget sich) |
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1735年ライプツィヒ大学学長に就任したヨハン・フロレンス・リヴインス(Rivins)の就任祝 |
1723年に着任し、毎週のカンタータ作成と結婚式や葬儀のための作曲演奏と多忙であった。この仕事の上で、よき理解者と助けは命綱のように大事だったと思われる。このBWV 36の三曲のうちの2曲はそのような人脈の深さを感じることができる。Philuris (フィラリス)-Lyre lover (竪琴
愛好家)?Law lover
BWV36c 喜び高く舞い上がれ
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1735年10月
すでに1730年にトーマ学校70代校長に就任していたヨハン・マティウス・ゲスナーの40歳の誕生祝 |
3.BWV36 喜び高く舞い上がれ (Schwingt freudig euch empor) |
BWV36 喜び高く舞い上がれ
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1736ライプツィヒ
待降節1
ローマ13:11-14
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1725年の原曲を元に
歌詞台本;ピカンダー
1.3.5.7,パロディ) |
1725年の待降節に「喜び高く舞い上がれ」はイエスの誕生を待ち望む人たちの舞い上がる喜びを表した曲である。この日,教会暦に指定されたイエスのエルサレム入城は受難節の記事であるが、ホサナの歓喜の声に迎えられるイエスは(マタイ21:1-9)、誕生を準備して待つ待降節第1日曜日の礼拝に用いられた。
これに、今こそきませ,異邦人の救い主(1524年ルター)よりコラール「いざ来ませ異邦人の救い主を」更に、「あなたがたは今がどんな時であるかを知っています。あなたがたが眠りから覚めるべき時が既に来ています。今や、わたしたちが信仰に入ったころよりも、救いは近づいているからです。」(ローマ : )の聖句を朗唱。
「一行がエルサレムに近づいて、オリーブ山沿いのベトファゲに来たとき、イエスは二人の弟子を使いに出そうとして、 言われた。「向こうの村へ行きなさい。するとすぐ、ろばがつないであり、一緒に子ろばのいるのが見つかる。」(マタイ21:1-9)のイエスのエルサレム入城を待降節のイエス誕生のテーマに重ねている。
聖トマス教会
バッハの楽譜
トマス教会カントルになる前と後では、楽譜の書き方が違うのではないかと思うようになってきた。
ワイマールやケーテン時代に書いた祝祭曲やカンタータは、トマス教会音楽監督に落ち着いて、礼拝説教前後の合計15~25分の持ち時間で、1・合唱,2,朗唱,3,アリア、4,朗唱,5,アリア,5,コラールという定式では楽譜は新しい形式になっていった。それは、聖書解釈さえわかれば計画的にでき,扱いやすい。
しかし、教会外で演奏する式典,葬儀,追悼、就任式、マリアの祝日、ヨハネの洗礼、聖ミカエルの祝日、宗教改革記念日などは、短すぎたり、長すぎたりまちまちで,その半分は「世俗音楽」と言われている。また、トロンボーンの元祖トロンバや羊の角発祥のホルンの元祖コルノ・ダカッツチャなどが入り賑やかになる。しかし、通常の礼拝では、素朴なアンサンブルが組まれた。
「小説バッハ」によると,小さい頃父バッハの音楽を世俗音楽かどうかと議論する人たちがいて,家に帰って父に言うと、父は怒って、「世俗」とか「聖なる」って、今後言ってはならない、と強く言われた。それではなんと言えば、良いのですかと聞くと、「命の音楽(viva musicaだったか?)」というエピソードを書いていた。(「小説バッハ」フランク,佐藤牧夫訳 、音楽の友社,1971)本曲BWV36c ピカンダーの誕生祝いのカンタータは、は何度も書き直しただろう、 全120小節、約4分くらいの曲だが、4/4小節の流れの中に、「2/2拍子、テンポ110の小節に変則的に一つまた二つと挿入」されて、musescoreという楽譜作成ソフトは問題なく受け入れるが、次の日本語歌詞を歌わせる。段階で使うCeViO(チェビオ)は、4拍の中に2拍という変則的な挿入を拒否する。この原因がわかるのに二日かかり,その対策に1日かかった。3回諦めて、別の曲に変えようと決心して、夜中に、別の種類の楽譜で試してみてはと言う閃きがあり,Mxlミュージックファイルでやってみたり,またべつのcap.ファイルを試したがダメだった。最後に癖が強いMidiファイルに歌詞群をコピーして良かったので,ochestra群を分けてコピーしたら,うまくいったかもしれない。と言うのが昨夜の段階で,今朝どうだったか確かめることにしている。聴いてみると前よりスッキリしていい音になっているので、成功であって欲しいと言うところです。 |